カーキで工事現場風にならない。シニアはレースと艶の“掛け算”でエレガントに
カーキ、ベージュ、ワイドパンツ。落ち着きがあって、私も大好きな組み合わせです。ところが、直線的で少しメンズっぽい顔立ちの私がそのまま着ると、しっくり来すぎてしまうことがあります。
鏡に映るのは、エレガントなマダムではなく、まるで工事現場の監督さん。似合っていないのではありません。むしろ似合う要素が重なりすぎて、目指したい雰囲気とは別の方向へ進んでしまうのです。
「似合う」と「なりたい」は同じとは限らない
顔立ちや骨格、肌の色に調和する服を選ぶと、無理なく自然に見えます。でも、診断で似合うと言われたものだけを集めれば、理想の自分になれるとは限りません。
私の場合、カーキのジレやワイドパンツのような力強い服は、顔の直線とよく馴染みます。そのままでは格好よさが前に出て、女性らしい柔らかさが少し遠のいてしまいます。
だから服を選ぶときは、「似合うか」だけでなく「今日はどう見られたいか」まで考えます。ここが、工事現場風とエレガントなマダムの運命の分かれ道です。

男前な服は、消さずに土台として生かす
カーキやベージュを着るとたくましく見えるからといって、全部を甘い服へ替える必要はありません。自分に似合う格好よさは、装いを支える大切な土台です。
今回のジレは、大きめの襟やポケットがあり、いわゆるユーティリティー感の強い一着。そこへ落ち感のあるベージュのワイドパンツを合わせ、縦の線をつくりました。色も形もハンサムですが、身体を締めつけず、堂々とした大人の余裕が生まれます。
大切なのは、男前な要素をなくすことではなく、反対の質感を少し掛け合わせること。強さがあるからこそ、繊細さがより美しく見えるのです。

レースの繊細さで、顔まわりに女性らしさを足す
ハンサムなカーキに合わせたのは、黒いレースがのぞくインナーです。ほんの少し見えるだけでも、直線的なジレの中に細やかな曲線が加わり、表情がぐっと柔らかくなります。
レースを全面に出すと甘さが強くなりますが、襟元と裾から少しだけ見せれば大人にも自然。黒を選ぶことで、カーキやベージュの落ち着きを壊さず、全体を引き締める役目もしてくれます。
シニアのおしゃれは、かわいい要素を増やすより、見せる分量を整えることが大切です。繊細なものほど小さく効かせると、上品な艶に変わります。

艶と透け感を散らして、マダムの空気をつくる
さらに、大きめのフープイヤリング、バングル、ブローチ、艶のある黒いバッグを加えました。足元は透け感のあるパンプス。服の色は渋くても、光を受ける小物が点在すると、装いに華やかなリズムが生まれます。
すべてを光らせる必要はありません。耳元、胸元、手元、足元のうち、二つか三つをつなぐだけで十分です。離れた場所に同じ艶を置くと、視線が自然に全身を巡り、コーディネートが一つにまとまります。
小物は飾りではなく、服と服の間を取り持つ存在。カジュアルなジレとエレガントなレースがけんかをしないのも、バッグやアクセサリーが両方をつないでくれるからです。

同系色でも、素材が違えば単調にならない
カーキとベージュは近い色なので、布の表情まで同じだと全身がのっぺり見えやすくなります。そこで、乾いた風合いのジレ、柔らかく落ちるパンツ、透けるレース、編み目のあるパンプスというように、素材の違いを重ねました。
色数を増やさなくても、マット、透ける、光る、揺れるという変化があれば奥行きは生まれます。落ち着いた色が好きな大人ほど、色だけではなく表面の質感まで見てみてください。
横から見たときにレースの裾が揺れたり、バッグの艶がのぞいたりする。正面だけでは分からない小さな動きが、後ろ姿までエレガントに見せてくれます。

何を着るかより、どう掛け合わせるか
「カーキはカジュアルだから」「ワイドパンツは男っぽいから」と、服を一枚だけ見て決めつけるのはもったいないことです。服は単品で完成するものではなく、組み合わせたところから表情が変わります。
ハンサムな服には繊細なレースを。渋い色には艶のある小物を。量感のあるパンツには透ける足元を。反対の要素を一つ足すだけで、手持ちの服にも新しい役割が生まれます。
鏡を見るときは「似合う、似合わない」で終わらず、強さと柔らかさ、マットと艶、直線と曲線のバランスを確かめてみてください。どちらか一方へ寄せきらないところに、大人にしか出せない色気があります。
工事現場の監督か、エレガントなマダムか。その差は本当に紙一重。でも、その紙一重を楽しめるようになると、おしゃれはもっと自由になります。ちなみにこのジレ、両脇に小型扇風機が仕込まれていそうですが、もちろん冗談です。